• 現実のものに

マリア・シャラポワが着用した、リトルブラックテニスドレスが今に伝えるもの

  • 2025/8/25

文:レイチェル・カバナー
写真:
ヴィヴィアン・キム

2006年の全米オープン、マリア・シャラポワはライトの下で輝くリトルブラックドレスを身にまとい、コートに足を踏み入れました。それは、テニス界がこれまで見たことのない瞬間でした。

クリスタルが煌めく、精緻に仕立てられたNikeのドレスは、あの舞台で、あの完成度で、今まで成し遂げられたことのない方法で、スポーツとファッションを融合させた1着でした。大胆で、凛とした佇まいで目を引くそのドレスは、単に美しいだけでなく、まさにステートメントアイテムだったのです。

その当時Nikeのウィメンズ トレーニング部門グローバル クリエイティブ ディレクターだったマーティン・ロッティによるこのドレスは、瞬く間に業界を揺るがす1着に。パフォーマンスウェアでも機能性を損なうことなく、エレガンスと個性を表現できると証明したのです。

「このドレスこそが新たな方向性を決定づけ、現在のテニスウェアで見られるトレンドを生んだのです」

マーティン・ロッティ、Nikeチーフ デザイン オフィサー

「当時は、スポーツとファッションが今ほど近い関係性ではありませんでした」とロッティは振り返ります。「この2つの世界をミックスしたアイテムは、その当時まだ珍しく、このドレスこそが新たな方向性を決定づけ、現在のテニスウェアで見られるトレンドを生み出したのです。『驚きの機能性』と呼びたいんですが、見た目は単なるドレス、でも最高レベルのプレーができるようにデザインしました。つまり、機能性とスタイルは両立できる、と伝えたかったんです」

それからほぼ20年が経った今、今度は国際テニス殿堂入りを果たした選手として、シャラポワは再びブラックドレスを身にまといコートに立ちます。そしてまた、Nikeがその彼女の大切な瞬間を彩るアイテムを制作することになったのです。

「個人的にだけでなく、Nikeとしても、またこの重要な瞬間に立ち会えて感慨深く思います」とロッティは語ります。「あの勝利から殿堂入りまで、彼女と共にここまで歩んでこれたのは、本当に素晴らしいことです」

約20年にわたる彼女とのパートナーシップを記念し、現在Nikeのチーフ デザイン オフィサーを務めるロッティと彼のチームは、その大切な瞬間を彩るアイテムを生み出すべく、オリジナルドレスを再解釈。丸みを帯びたネックライン、印象的なブラックカラー、さりげない輝きといった、最もアイコニックなディテールはそのままに、今回は夜の雰囲気に溶け込むよう、長めの裾とプリーツスカートで洗練されたデザインへと昇華させました。

新たなルックにはまた、パーソナルなディテールも随所に組み込まれています。ドレスにはシャラポワのグランドスラム優勝を象徴する5つの星の刻印、上品なテーラードジャケットには彼女の息子の誕生日に基づくアルゴリズムで計算設計された特注ボタン、モダンでメタリックなヘアアクセサリー、巻きつけ式のSwooshブレスレット、そして今年後半に発売予定の新たなスポーツウェアモデル、ナイキ ショックス Zを独自に解釈したシューズ。

これらのディテールが一体となったレガシーを想わせるトータルルックは、テニス界のレジェンドの歩みを称えつつ、現在の彼女を映し出しています。

「あのリトルブラックドレスをもう一度作りたかったんです。皆が覚えているあのドレス、でも今回の重要な瞬間にふさわしく昇華させたものを」とロッティは説明します。「彼女は今回、プレーするのではなく、祝福される立場にあります。そこで私たちは、ほんの少しフォーマルで、控えめなデザインへと進化させました。オリジナルドレスの本質を残しつつ、現代の空気感に合うようにしたんです」

「オリジナルドレスの本質を残しつつ、現代の空気感に合うようにしたんです」

マーティン・ロッティ、Nikeチーフ デザイン オフィサー

機能性、スタイル、ストーリーの調和という本質は、シャラポワとNikeのパートナーシップを形成する核であり続けてきました。シャラポワは、新たなデザインを見た途端、オリジナルドレスとその思い出全てが甦ったと語ります。

「本当に重大な瞬間でした」とシャラポワは言います。「あのドレスを初めて試着した時のことを覚えています。特別に感じるものがあり、自信がみなぎりました。自由に動けて、私自身のスタイルの延長線上にありながらも、高機能ウェアとして活躍してくれました。しなければならない動作の妨げになることなく、エレガントで、強さを感じられたのです」

エレガンスと強さを併せ持つその二面性が、今日もなお彼女のシグネチャースタイルを形作っています。アスリート、実業家、そして母親として、彼女は自信、快適さ、そしてストーリーのある、タイムレスなアイテムに惹かれる傾向があると言います。

「何年もずっと着ている服があります」と語る彼女。「着るだけで自分らしくいられる、特別なセーターやドレスを持っているというのは、どこか美しいと思います。アイデンティティの一部、このブラックドレスもまさにそんな存在です」

「着るだけで自分らしくいられる、特別なセーターやドレスを持っているというのは、どこか美しいと思います。アイデンティティの一部、このブラックドレスもまさにそんな存在です」

マリア・シャラポワ、Nikeアスリート、4大大会5回優勝

彼女は当時、あのドレスが注目を集めたことだけでなく、それ以上のことをもたらしたと覚えていると言います。アスリートが着られるウェアとは何かということだけでなく、コート上でどのように自分を表現できるかという点において、常識を覆したのです。ロッティもこれに同意し、それは未知の領域への大きな一歩だったと語ります。

「あのドレスを着用してプレーするマリアは、力強くて優雅でしたよね」と彼は言います。「ステレオタイプを打ち破り、ただ一つのものになる必要はなく、両方とも実現できる、と自ら示したんです」


そして、その現実の課題に挑戦する時こそ、Nikeの強みが発揮される、とロッティは言います。「最高のプロジェクトとは、何か新しいこと、これまで誰も成し遂げていないことへの挑戦です」と彼は言います。「それに挑戦する時こそ、Nikeは自らを刷新し、アスリートを支え、スポーツを進化させるんです」

つまり、このドレスは当時も今も変わらず、Nikeがシャラポワをはじめとする、すべてのアスリートたちと築いてきた永続的な関係性そのものなのです。

「Nikeでは、アスリートたちを家族と呼びます」とロッティは語ります。「この意味は、彼らの夢は私たちの夢となり、私たちは喜びも悲しみも一緒に分かち合います。誰も見ていない時でも、世界中が見ている時でも、私たちはそこにいるからです」

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