Nikeの陸上競技コーチを務めるディルジート・テイラーは、忍耐力の求められる中長距離走のレース(1,500m、5,000m、10,000m)で数々のチャンピオンを指導する、文字通り、プロのコーチです。 中長距離走で表彰台に上がるために必要とされるのは「スパート」だと、彼女は言います。アスリートにスイッチが入り、最後の数メートルで急加速するスパートが、勝敗を左右するのです。 ここでは、ラストスパートをかけるためのシンプルな戦略をコーチが伝授します。
スポーツにおいて最も盛り上がる場面と言えば、やはりレース終盤でしょう。 終盤のわずかな時間がメダルの行方を左右し、選手の人生を決めるのです。 終盤でのスパートに向けてアスリートをコーチする際は、アスリートが消耗を最小限に抑えた状態で最終段階に入れるようにレースを組み立てます。終盤のアスリートの走りが単に普通の速さのように見える人もいるかもしれませんが、実際には残り1周でそのスピードを出すために彼らは実に強靭な体力で臨まないとならないのです。 不必要なポジション争いや動きなど、序盤であまり多くのエネルギーを使わなければ、気負いなく自信をもって最適なスパートに備えることができます。 レース中によぎる直感も、その一部です。
自分の世界を極めて小さくしていく力が重要です。 次の10メートル、5メートルを見据え、強いパワーを維持するために必要なことに集中するのです。マイク・スミス、陸上競技コーチ
自分の世界を極めて小さくしていく力が重要です。 次の10メートル、5メートルを見据え、強いパワーを維持するために必要なことに集中するのです。
最後の数メートルでリードしていればそのままキープできる、あるいは1着でゴールするためのスパートをかけられるという考え方もあります。自分の世界を極めて小さくしていく力が重要です。 次の10メートル、5メートルを見据え、強いパワーを維持するために必要なことに集中するのです。 「メダルが取れるかも」という考え方はあまりにも大きすぎます。 たとえ今が人生の大一番であるとわかっていても、 走っている間は明確に集中していることが必要です。
編集者注:Nikeで最も有名な長距離選手の一人が、「アメリカの中長距離の天才児」とも呼ばれたスティーブ・プリフォンテーンです。プリは、どのレースも命懸けで駆け抜けていました。 その闘志、大胆なレース戦術や生まれながらのカリスマ性は多くの人々を魅了し、将来有望な若きランナーたちに走る意欲と全力を尽くす意志を与えてきました。
当時のプリフォンテーンはこう語っています。 「単に走るというだけではなく、見ている人に興奮を与えたい」
最後の試合となったのは1975年5月29日。フィンランドの代表チームメンバーやフランク・ショーターなど長距離の有力選手の出場のための準備と支援に、彼自身も関わっていました。 5,000m競技に参加したプリフォンテーンは、最初の2マイルはショーターの後を追っていましたが、3周を残したところで一周63秒のペースに加速し、 ヘイワードフィールドにいた観客の前で最後のラップを60.3秒で周り、自身がもつアメリカ記録を凌ぐ13分23秒8で優勝しました。 まさに、究極のスパートでした。